1. 妊娠しやすい身体つくりを維持する
健康的な生活習慣を維持することは、妊娠の確率を高めるための基盤となります。
生活習慣が乱れていれば、生理周期が不規則になったり、排卵が起こりにくくなったりすることも。
男性の場合では、精子の質が低下する要因にもなります。では、どのような生活習慣が妊娠率を高めるかみてみましょう。
1-1. 健康的な食事を摂る
バランスの良い食事を摂る
健康的な体を作る上で、ビタミン、ミネラル、たんぱく質といった栄養素をバランスよく摂取することが重要です。朝食を抜く習慣があったり、頻繁に外食をとっていると、これら必要な栄養が不足しがちになります。特に、女性の場合、葉酸、カルシウム、鉄分が不足しやすいため、意識的に摂ることを勧めています。
葉酸を妊娠前から取ることで、赤ちゃんの脳と脊椎の発達に良い影響を与えることが分かっています。また、排卵を促進し、着床や初期胚の生存をサポートするのに役立つため、大豆やホウレンソウ、レバーなど葉酸を多く含む食材を意識して摂るとよいでしょう。
カフェインの摂取量に気をつける
カフェインの過剰摂取が生殖能力の問題につながる可能性があることを示唆する研究結果はいくつかあり、コーヒーは1日2杯程度に抑えることをお勧めしています。
また、妊婦のカフェイン摂取量については、世界保健機関(WHO)などの様々な機関がガイドラインを設定しており、300mg/日以下に制限(約2-3杯の普通サイズのコーヒー(1杯あたり約100mgのカフェイン)に相当)することが多いです。そのため、妊娠した後の生活も意識して、麦茶を飲むなどカフェインレスの生活に慣れておくのも良いでしょう。
アルコールの摂取量に気をつける
妊活中の飲酒は、1日にグラス2杯程度の量であれば直接的に妊娠率や将来の赤ちゃんに影響する可能性は低いとされています。デンマークでの研究によると、1日にグラス2杯程度のお酒であれば、妊娠のしやすさに影響はないという結果が出ています。
しかし、週に14杯以上の飲酒は妊娠率が18%低下したという結果も出ています。妊娠を望んでいる方にとって、過度な飲酒は避けた方が安心です。また、妊娠中は赤ちゃんの発育に安全な飲酒量はないため、妊娠の可能性がある時期にはお酒は控えましょう。
1-2. 歯医者に行く
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、妊娠している女性が歯周病に罹患していると、早産や低体重児の出生の危険性が高くなることがわかっています。そのため、一度歯科クリニックでチェックを受けることをお勧めしています。
また、妊娠中に増加するエストロゲンが歯周病原菌の増殖を促進するため、エストロゲンの増加とともに妊娠性歯肉炎にかかりやすくなってしまいます。
基本的には歯垢がない口腔内では歯肉炎は起こりにくいため、妊娠前に歯垢を歯科クリニックで綺麗に除去してもらうのもよいでしょう。
1-3. 運動をする
適度な運動をすることで、自律神経が整ったり、血流改善や健康的な体重が維持できるなど、妊活に良い効果をもたらします。
体重が増えすぎている場合には、減量することでホルモンバランスが整う効果が期待できます。
ただし、過度な運動は逆効果です(極端な運動は排卵を妨害する可能性があるという報告もある)ので、まずはウォーキングから始めてみるといいですね。
1-4. 健康的な体重を目指す
太り過ぎや痩せすぎは排卵不順につながる可能性があります。
肥満で排卵障害がある女性は、体重の7%の減量と、週150分以上のウォーキングなどの中程度の運動習慣を心掛けることを推奨されています。栄養素をバランスよく摂れる食事を摂りつつ、適度な運動によって理想的な体重を維持することが必要といえるでしょう。
1-5. 喫煙を控える
喫煙は、妊活を開始してから妊娠するまでの期間を長くしたり、女性の閉経を早めたりすることがわかっています。これは、流産や子宮外妊娠のリスクの増加とも関連しています。
男性パートナーも喫煙はやめるべき習慣です。喫煙は精子の質と量を低下させる可能性があります。
また、タバコは不妊の原因となるだけでなく、胎児の発育に悪影響をもたらしたり、妊娠中の母体合併症のリスクを高めたりすることが知られています。妊娠したら禁煙するのではなく、妊活を考え始めた段階で禁煙をすすめていきましょう。
2. 避妊をやめる
妊娠を希望されるときは、避妊を中止することが第一歩となります。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、意外と見落としがちな点です。
特に、ホルモン型の避妊薬(ピルや避妊リング)を使用している方は、体が自然な排卵リズムに戻るまでに数週間かかる場合があります。
妊娠しやすい体作りをするために、早めに準備を始めることが大切です。
3. 自分の排卵周期を理解する
妊娠をするためには、まず自分の身体の仕組みを理解する必要があります。特に、最も妊娠しやすい時期である排卵期を把握することが重要になります。
3-1. 妊娠の仕組みを理解する
卵巣では、月経周期(正常範囲は25-38日)に1回、成熟した卵子が卵管に向けて飛び出します。これを排卵といいます。
このときに精子と卵子が出会うことができれば受精する可能性があり、受精卵が子宮内膜にもぐりこんでいく(=着床する)と、妊娠成立となります。
妊娠をするためには、まずは排卵期に、生きている卵子が精子と出会う必要があります。しかし、卵子の寿命は24時間程度のため、この間に精子と出会わなければ妊娠できません。したがって、自身の排卵期を推測することが妊活において必要になります。
3-2. 妊娠しやすいタイミング
一般的に排卵の4日前~排卵前日の4日間が最も妊娠しやすいタイミングと言われています。
排卵後の卵子の寿命は約一日ですが、女性の体内での精子の寿命は2〜3日です。排卵日は早まることも遅くなることもあるため、排卵日の数日前から2日置き間隔で性交渉をすると妊娠する確率も高まります。
3-3. 排卵日の身体の特徴
排卵日が訪れると以下のような体の変化が見られる場合があります。性交渉のタイミングを計る際の参考にしてみましょう。
基礎体温が低温期から高温期に移行
基礎体温とは、生命維持に必要な最小限のエネルギーしか消費していない安静状態にあるときの体温のこと。朝目覚めたら、体温計の先端部を舌下に置いて測定します。
排卵が近づくと基礎体温がわずかに下がり、その後、排卵直後に通常約0.4度から1.0度の急激な上昇が見られます。その後、排卵中は基礎体温が高い状態が続きます。基礎体温を数カ月分記録しておくと低温期と高温期の切り替わり時期(排卵日)に気づきやすくなり、性交渉のタイミングを狙いやすくなるでしょう。
おりものの質感が滑らかになり、量が増える
排卵が近づくと、体はより多くのエストロゲンを生成し、おりもの(頸管粘液)が卵白のように伸びて透明になり、排卵中に放出される卵子に精子が泳ぐのを助けます。
腹痛や腰痛がある
排卵痛による腹痛や腰痛では、卵巣が卵子を放出する腹部の側面に鋭いまたは鈍い痛みを感じることがあります。また、痛みに加えて、軽い性器出血、おりもの、吐き気を経験することもありますが、軽度で短期間であることが多いです。
排卵日前後に排卵出血や卵巣出血が見られる
排卵すると、ホルモンの急増により、少量の出血や茶色のおりものが発生することがあります。出血が続いた場合は、医師の診察を受け、異常な出血でないかを確認する必要があります。
3-4. 排卵検査薬を使用する
早く妊娠する方法を探している場合は、排卵検査薬を利用する方法もあります。
尿の中に含まれる黄体形成ホルモン(LH)の濃度によって排卵日を予測するもので、排卵が近づくと急激に増えていきます。このホルモン値がピークになったときから約36〜40時間以内に排卵するため、そのメカニズムを利用した予測方法です。
排卵検査薬の使用は排卵が始まると思われる数日前から開始します。基礎体温のチェックや排卵日カレンダーなどと並行し、排卵日の予想を立てながらその数日前に使用すると可能性が高まります。
4. クリニックで検査を受ける
早く妊娠したいと思って、妊活をはじめてもなかなか授からない場合は、早めに婦人科を受診するのも良いでしょう。
妊娠のための準備を進めていても、卵巣内の器質的な異常があったり、妊娠するのに絶対的な障害がある場合もあります。男性の場合は、精索静脈瘤(睾丸の上にできるコブ)や生活習慣病が精液の状態に影響していることもあります。症状として表れにくい病気も多いため、病院で検査を受けて早期発見・治療することが重要です。医療機関では、妊活に必要な下記のことを確認してもらうことができます。
- 女性側(子宮、卵巣、卵管、感染症、甲状腺)の状態
- 男性側(精子、感染症)の状態
- 疾患の有無
- その他不妊の原因(セックスレス、射精障害など)
5. まとめ
妊活は夫婦ですすめることが大切です。妊活の時期や方法について話し合ったり、スケジュールの調整や生活習慣の見直しを行ったりするなど、妊娠という同じ目標を目指して、お互い協力していきましょう。
妊活を夫婦一緒に進めることで、妊娠や出産、産後育児を協力して乗り越えていくための土台作りができるでしょう。お互いに思いやる心を忘れず、妊活を進めていけるといいですね。